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アクテリオンの第三相アウトカム試験が成功
スイスのアクテリオン(SIX: ATLN)はエンドセリンA/B受容体拮抗剤ACT-064992(macitentan)の第三相肺高血圧症試験が成功したと発表した。 偽薬、3mg、10mgの三群に無作為化割付して疾病悪化・死亡リスクを比較したところ、3mg群は偽薬群より30%、10mgは45%、低かった。
肺高血圧症治療薬の第三相試験は、同社のTracleer(bosentan;和名トラクリア)を含めて、6分間歩行テストや症状スコアを用いて薬効評価することが多い。macitentanの開発が画期的なのはアウトカム試験を行ったことだ。Tracleerの後継薬となるべきmacitentanに強力なエビデンス、セールスポイントを与えるために、ハイリスク・ハイリターン型の第三相試験に踏み切ったのである。それだけに、開発成功はサプライズであり、価値が高い。
Tracleerと比べて受容体結合の持続性や組織移行性が高く、一日一回の服用で足りる。末梢浮腫や肝機能検査値異常のリスクも小さい模様であり、第三相試験の発生率は偽薬並みだった。安全性面でも競争力がありそうだ。
リンク:アクテリオンのプレスリリース
J&Jが米国でイグザレルトを静脈血栓塞栓治療に適応拡大申請
Xa阻害剤Xarelto(rivaroxaban;和名イグザレルト)は様々な用途で開発されていて、米国では関節手術後の静脈血栓塞栓予防と心房細動患者の脳卒中予防で承認、急性冠症候群の再発予防で承認審査中だが、新たに、静脈血栓塞栓の治療用途で承認申請された。
バイエルから米国の開発販売権を取得したJ&Jが申請したもの。臨床試験では、当初はヘパリン、その後はワルファリンを用いた群と再発リスクや安全性が同程度だった。
経口抗血栓薬の市場性は高リスク心房細動患者向けが一番大きいが、二番目は静脈血栓塞栓治療だ。急性冠症候群も大きいが治験で多剤併用による出血リスクが見られたので、承認も普及も不透明だ。それだけに、今回の用途は重要である。
リンク:J&Jのプレスリリース
ニンジン細胞培養による希少疾患用薬が米国で初承認
イスラエルのProtalix BioTherapeutics(NYSE-AMEX:PLX、TASE:PLX)がファイザーと共に開発したI型ゴーシェ病治療薬、Elelyso(taliglucerase alfa)が米国で承認された。この希少疾患はライソゾームの糖脂質分解酵素、グルコセレブロシダーゼの不足が原因で肝脾腫、貧血、易出血、骨疾患などを発症する。
代表的な治療薬であるジェンザイム(サノフィ・アベンティスの子会社)のCerezymeは、この酵素の遺伝子をチャイニー・ズハムスター卵巣細胞に組込んで生産させたもの。シャイアのVPRIVはヒト細胞に組込み・生産させたものだ。一方、Elelysoはニンジン細胞を使っている点が画期的。遺伝子組換え薬の特許は培養細胞に関するものが多いので、他社の特許を侵害せずに類似した薬を開発できる可能性がある。
Cerezymeは年20万ドルの高価な薬だが、Protalixは25%低い価格で販売する予定。ジェンザイムと同様に、民間医療保険加入者の自己負担を肩代わりし、未加入者には値引きする計画。Cerezymeは品質管理問題が発生し供給不足状態にある。Protalixは24ヶ月分の在庫を維持することで安定供給を確保する考えだ。
リンク:FDAのプレスリリース
アボットが腎臓学領域のパイプラインを買収
アボットはデンマークのAction Pharma A/Sからメラノコルチン受容体アゴニストAP214の権利を完全買収することを発表した。代価は1.1億ドルで、Zealand Pharmaに一桁台前半の売上ロイヤルティを負う以外は後発債務は無い。AP214はZealandのペプチド至適化技術を用いて開発されたαメラニン形成細胞刺激ホルモン誘導体。虚血時の炎症反応やアポトーシスを緩和する作用がある模様だ。
後期第二相段階で、一本目の結果は昨年のRenal Week(米国腎臓学会)のlate-breakerで発表された。抄録によると、オンポンプ心臓手術を受ける急性腎障害のリスクが高い患者77人を偽薬、600mcg、800mcgの三群に割付けて、施術前後に三回に分けてivボラス投与した。各群の90日死亡・罹患(透析施行や腎機能低下)発生率はそれぞれ58%、24%、35%となり、二用量とも大きなリスク削減効果を示した。高用量群はGFR(腎濾過率)や急性腎障害リスクも有意に優れていた
データの割には安い買い物だ。おそらく、何か弱点があるのだろう。そもそも、この試験は後期第二相と呼ぶには症例が少ない。普通なら後期第二相の次は第三相だが、アボットは二本目の後期第二相試験を年内に開始する予定。
リンク:アボットのプレスリリース
2011年Renal Week抄録(pdfファイル) ・・・D. Steinbrucheら(LB-P03172、第9B頁)
BG-12のロイヤルティ権利をロイヤルティ・ファーマが買収
バイオジェン・アイデックが承認申請した多発性硬化症薬に係わる権利を米国のロイヤルティ・ファーマ社が7.6億ドルで買収した。
ロイヤルティ・ファーマ社のビジネスモデルは、開発中・上市済みの新薬に係わるロイヤルティ権や達成報奨金権を買収することだ。取引相手の企業や大学は将来の収入を今日の研究資金に代えることができる。一方、ロイヤルティ・ファーマは新薬の将来性を適切に評価することによって、買収額を上回る収入を得ることが期待できる。
これまでに、HumiraやNeulastaやRemicade、Lyricaなどに係わる権利を買収した。2011年にはアステラス製薬からDPP-4阻害剤に関する特許を6億ドルで買収している。このDPP-4阻害剤の特許は元々はポセイドンという新興企業が持っていたが、抗癌剤タルシバを開発したOSI社が糖尿病薬に進出するために買収、その後、OSIを買収したアステラスがおそらく投資資金の一部を回収するために売却した経緯がある。
このエピソードを見ても分かるように、企業買収の活発化はロイヤルティ・ファーマには追い風だ。
今回のBG-12(dimethyl fumarate)はスイスのフマファーム社を買収して入手したもの。今年2月に承認申請された。再発寛解型多発性硬化症の再発を防ぐ効果が高く、また、経口投与できる。免疫抑制作用が小さいため、ジレニアのような日和見感染リスクを持たない。心血管副作用も小さい。肝毒性が懸念されたが、第三相試験では大きな問題はなかった模様だ。紅潮や胃腸系副作用の発生率が高いが深刻ではなさそうだ。
フマファームの株主は年商が一定水準を超えた場合に達成報奨金をバイオジェン・アイデックから貰うことができる。ロイヤルティ・ファーマはこの権利を買収した。年商が30億ドルを超えれば累計で9億ドル程度に達するはずなので、十分ペイしそうだ。
リンク:ロイヤルティ・ファーマのプレスリリース(pdfファイル)
GSKはアストラゼネカの買収に興味が無い
グラクソ・スミスクライン(GSK)のCEOであるAndrew Wittyは、年次株主総会で、アストラゼネカを買収する考えが無いことを明らかにした。Economic Timesなどが報じた。
既報のように、GSKはヒューマン・ジノム・サイエンス(NASDAQ:HGSI)に買収オファーを行ったが、価格が低すぎると断られた。一方、アストラゼネカはCEOのDavid Brennanの退任が発表されたところであり、タイミングとしては買収を仕掛け易い。そこで、株主総会に出席した投資家が買収するならアストラゼネカの方が良いのではないかと尋ねたが、Wittyは、巨大買収はdistracting(集中の妨げになる)と語った。
製薬業界では2000年前後に巨大買収・合併が相次いだが、今日では、問題解決にはならないという声が少なくない。シェアが上昇しても他社が同様に巨大買収を行ったら優位性を失ってしまう。そもそも、知的所有権という参入障壁を持つR&D型製薬業界では、市場全体のシェアが上昇してもストレートに市場支配力が高まるわけではない。結局、重複事業の整理や人員削減、購買力強化などコスト削減効果しか生めない。筆者にも経験があるが、組織統合に費やすエネルギーは大きく、人心の乱れを生み易い。
勿論、大型薬の特許切れを控える企業の苦肉の策としての重要性は今日でも明らかであり、MSDはシェリング・プラウを、ファイザーはワイスを買収した。GSKの場合はグラクソ・ウエルカムとスミスクライン・ビーチャムが合併した時の苦労がよほど大きかったのか、これまでも大型買収に否定的な考えを示している。
リンク:Economic Times
カナダでレブラミドのドクターレター
ヘルス・カナダ(カナダの厚生省)は、セルジーンがRevlimid(lenalidomide;和名レブラミド)の二次性原発性悪性腫瘍リスクに関するドクター・レターを発出したと発表した。
Revlimidはサリドマイド類縁体で再発性多発骨髄腫などに承認されている。複数の一次治療試験が行われ、優れた疾病抑制効果が明らかになったが、意外なことに、二次性原発性悪性腫瘍が多く発生した。ヘルス・カナダによると、発生率は7%で対照群(1.8%)の4倍だった。急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群、固形癌などが多かった。改めて再発治療試験のデータを分析したところ、100人年当りで各3.98と1.38だった。
残念なことだが、血液癌の治療薬は他にも同様な現象が見られるものがある。薬のせいかもしれないし、寿命を延ばすが故に他の癌が進行・表面化する時間を与えてしまうのかもしれない。薬のせいであろうがなかろうが患者や医師にとっては重要な情報なので、ヘルス・カナダは医師に注意喚起したが、全体的には便益がリスクを上回ると判定した。EUの医薬品審査機関と同じだ。FDAは未だ結論を出していないが、おそらく、同じだろう。
リンク:ヘルス・カナダのリリース
今週は以上です。
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GSKが二種類の黒色腫用薬を承認申請へ
グラクソ・スミスクラインは4月25日の決算発表資料の中で、二種類の転移性黒色腫用薬を承認申請する考えであることを明らかにした。
一つはbraf阻害剤GSK2118436(dabrafenib)。BREAK-3試験の結果を検討し、承認申請できると判断した。承認されれば2011年8月に米国で承認されたロシュのZelboraf(vemurafenib)に次ぐbraf阻害剤の第二号となる。
もう一つはMEK阻害剤GSK1120212(trametinib)で、この試験も承認申請できる結果になったようだ。
注目されるのは、この二剤の作用が補完的で、共に経口剤であることからコンビ薬を開発する可能性もあることだ。
Zelborafは高い抗腫瘍作用を持つが癌が遺伝子変異を経て抵抗性を獲得してしまうことがある。MAP/ERKパスウェイだけでなくRAS/RAF/MEK/ERKパスウェイも同時にブロックすれば、作用の持続性を高めることができるかもしれない。
このような期待から、GSKはこの二剤の併用第三相試験を開始する予定。
リンク: 2012年第1四半期決算発表資料(pdfファイル)
顎の脂肪を分解する薬の第三相試験が成功
ロサンジェルスのバイオ企業Kythera Biopharmaceuticalsとバイエルが共同開発している頤(おとがい)下脂肪治療薬、ATX-101の欧州第三相試験が二本とも成功した。詳細は学会発表される予定。
ATX-101は体内に存在する食物脂肪分解物質であるデオキシコロール酸ナトリウムを化学合成したもの。臨床試験では頤の脂肪領域に月一回、最大四回に亘って注射したところ、脂肪スケールや患者満足度スケールが偽薬比有意に改善した。
主な有害事象は疼痛、腫脹、しびれ、挫傷、硬化など、注射部位の軽中度、一時的なものが多かった。実用化されれば頤下脂肪で初の美容治療薬となる。
リンク:両社のプレスリリース
FDAがVotrientの適応拡大を承認
FDAはGSKのVEGF受容体阻害剤、Votrient(pazopanib)の適応拡大を承認した。2009年の切除不能腎細胞腫に続いて、末期軟組織肉腫の化学療法後アジュバント療法に用いることも可能になった。消化管間質腫瘍と脂肪肉腫は適応外。
臨床試験では無増悪生存期間がメジアン4.6ヶ月と偽薬群の1.6ヶ月を有意に上回った。従来同様に致死例を含む肝毒性が枠付警告されている。
リンク:
FDAがヴィーヴァスのED治療薬を承認
FDAはヴィーヴァス(NASDAQ: VVUS)が田辺三菱製薬から導入して開発したED治療薬、Stendra(avanafil)錠を承認した。
ファイザーのViagra(sildenafil)、バイエルのLevitra(vardenafil)、イーライリリーのCialis(tadalafil)に次ぐ第4のPED-5阻害剤だ。30分前に服用すれば間に合うので、Viagraと同程度に作用のオンセットが早い。
ヴィーヴァスは導出を検討している模様。Viagraに14年遅れで発売される割には長所が明確ではなく、差別化が難しそうだ。Viagraは7年後、他の薬はその前にGE化しそうなので、Stendraに残された時間は限られている。
リンク:
武田のDPP-4阻害剤は又も承認見送りに
FDAは、武田薬品のDPP-4阻害剤alogliptin(和名ネシーナ)とpioglitazone配合剤の承認を又も見送った。
ネシーナは2010年に日本で承認され、翌年にはpioglitazone配合剤もリオベルとして承認されたが、他の国では未承認である。米国は2007年に承認申請されたが、rosiglitazoneの心筋梗塞リスク騒動の余波を浴びて遅延した。
alogliptin自体に心臓疾患リスクがあるようには見えない。2010年のADA米国糖尿病学会で臨床試験の心血管メタアナリシスが発表されたが、数値上は偽薬群よりリスクが小さかった。但し、該当症例数が少ないために信頼区間は広い。
武田は2011年7月にEXAMINE心血管アウトカム試験の中間解析結果等をFDAに提出した。当時のプレスリリースによるとFDAの安全性要件を満たす内容であったはずだった。
筆者が三年前に行ったシミュレーションでも、もしリスクがADAで発表されたデータ通りならば、EXAMINE試験中間解析とSU剤対照長期投与試験のデータで症例数が充足され、心血管疾患リスクが偽薬比非劣性であることを証明できるはずだった。
日本だけで承認される薬が再び増加し始めた今日では、海外の承認審査機関の評価を精査することが必要だが、残念なことに、情報は限られている。
リンク:
2010年ADAの抄録(William Whiteら、抄録番号391-PP)
デノスマブを前立腺癌の骨転移予防に使うのは時期尚早
アムジェンは抗RANKL完全ヒト抗体denosumabを骨粗鬆症治療薬Prolia及び癌の骨転移治療薬あるいはホルモン療法誘導性骨粗鬆症治療薬Xgevaとして販売している。米国で骨転移予防の適応拡大申請を行ったが、承認されなかった。
諮問委員会で13人の委員中12人が反対したことを考えれば不思議は無い。去勢療法抵抗性前立腺癌でPSA値が高い患者を組み入れた臨床試験では、主評価項目である骨転移リスク削減効果は確認されたものの、延命効果や無増悪生存期間を延ばす効果は確認されなかった。
懸念されるのは、顎骨壊死が15人に一人という高い頻度で発生したことだ。同剤やビスフォスフォン酸のように骨の新陳代謝を抑制する薬は、抜歯の後のヒーリングも妨げてしまう。
腫瘍学用途では120mgを4週間に一回皮注と高量を投与するので、60mgを半年に一回の骨粗鬆症治療用途よりリスクが高まる。
既に骨転移した患者に対して使う場合は便益が大きいが、未転移は治療をしないリスクが比較的小さい分、便益も小さくなる。このため、諮問委員会は顎骨壊死のリスクを正当化できないと判定した。
Xgevaは日本では第一三共がランマーク名で2012年4月に発売した。
リンク:アムジェンのプレスリリース
アストラゼネカがArdeaと買収で合意
アストラゼネカはArdea Biosciences(Nasdaq: RDEA)と買収で合意した。株主には一株当り32ドル、総額12.6億ドルを現金で支払う。狙いは、第三相段階の尿酸治療薬、RDEA594(lesinurad)だろう。
痛風の原因である高尿酸血症は尿酸の生産過剰や分解・排泄不足によって引き起こされる。典型的な尿酸降下薬であるキサンチンオキシダーゼ(XO)阻害剤は尿酸合成を阻害するメカニズムなので、前者に適しているはずだが、後者にも用いられている。
後者に適した薬が無いからだ。RDEA594はURAT1という、腎臓のトランスポータを阻害することによって尿酸の排泄を促す新しいメカニズムを持っているので、分解・排泄不足型に適している可能性があり、また、併用もできそうだ。
2011年に開始された第三相試験では200mg又は400mgを一日一回、経口投与で、XO阻害剤を服用している患者に追加したり、不耐患者に単剤投与する用法を試験している。2013年から結果が出始める見込み。
アストラゼネカには馴染みの無い分野だろうが、CEOが退任しなければならないほど新薬開発に苦戦しているので、選り好みはできないのだろう。
リンク:両社ののプレスリリース
今週は以上です。
Author:ジレッタント
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2012年3月から、Medicine Blogを衣替えして海外医薬品ニュースをお送りします。現在は週末だけのパイロット・プロジェクトですが、将来的に毎朝発信する計画もあります。ご愛読ください。